経済発展と依存症の板ばさみ

経済発展と依存症の板ばさみ

インターネット依存臨床診断基準の策定

様々な思惑が交錯しているとしてもだ、中国のこうした社会活動における弊害に関して積極的に取り組んでいる姿勢については、良しとするべきだ。今は日本と中国との関係がこれでもかと冷え切ってしまっているため、中国に対して嫌な思いを持っている人もいるかと思うが、かの国内でもこうした問題を表沙汰に出してキチンと対策に取り組んでいる事実はキチンと評価するべきところだ。その一端として、現在でもインターネットだけでなく、あらゆる依存症に関する問題を取り上げてきた『北京軍区総医院』においては、そうした依存症に対してどのように取り組んでいけばいいのかをまとめた『インターネット依存臨床診断基準』と呼ばれる判断基準を定める。

この発表によってそれまで精神疾患として取扱ってきたインターネット依存という問題に対して、『習慣の問題』とする意見、『心理障害』とする意見などが次々に発表された。これは2008年当時のモノで、勿論現在の基準とは大きく異なっている点だが、それまで曖昧に考えられていたインターネット依存症に対して前進するだけの材料になったといえる。

その後何とかもう少し分かりやすい明確な基準を設けるべきだとする意見が出てきたため、インターネットを利用するに当たって、ある特定の条件に当てはまる行動や感情を有している場合には、利用を控えるべきだとする線引きも挙げられるようになった。

インターネット依存になりやすい人の特徴

インターネットといっても、誰もが簡単に利用することが出来るものだ。だが依存症になる人とならない人に分かれるわけだが、その違いとはどんなところにあるのか考えてみると、次のような特徴に当てはまる人が特に依存症になりやすいと言われている。

  • ・インターネットにアクセスしたいという強い渇望、もしくは衝動に悩まされて、どんなことをしてもアクセスしようとする
  • ・インターネットをしていた経験を思い出し、またアクセスしたいと常に考えるようになる
  • ・家族や友人、教師に医師、すべてに対してインターネットをどの程度利用しているかについて、嘘をつく
  • ・インターネットをやめようとしたが、そうした意志が実を結んだことがない
  • ・ほんの数日アクセスしなくなるだけで、苛立ちや怒りといった感情面に突き動かされてしまう
  • ・インターネットの利用によって、既に心身のどちらかに影響を及ぼしている

上記のような6つの条件に当てはまる行動を起こしていると、インターネット依存の傾向にあると考えられている。種類は違うが、ギャンブル依存症に近いところがあるといえる。楽しいという感情に捉われ、興奮することが出来るだけの十分すぎる刺激がオンラインゲームを始めとして多く得られることで、より深い依存傾向を示してしまうという。依存症問題はもはや現代社会において由々しき問題となっているが、オンラインゲームにおいてもそれは顕著だといえる。

ただ中国では幼少期を通して、娯楽に触れることが少なかった反動もあるかもしれない。また裕福な家庭に育ったというのも少なからず関係しているだろう、それまでまともな遊びをすることがなく、勉強一択しか選択肢がなかった人はなおさら当てはまるのではないか。押しつぶされた感情の果て、辿り着いた文明社会の産物であるコンピュータと、その機能を生かしたインターネットによる娯楽の誕生は中国に利点をもたらしもしたが、欠点とも言うべき染みをつけたというべき点だ。

二律背反する国勢

では一掃してしまえばいいのでは無いかと、そう思ってしまうが市場の大きさからすればそんなことを出来るほど中国は経済を軽んじていないだろう。特に世界最高クラスの市場を形成し、世界にも影響を及ぼせるだけの経済となったオンラインゲーム市場を蔑ろにする事は、その分だけ生まれるはずだった利益を全て失うことを意味している。依存症患者が出る事は避けたいと考える反面、それらを出してしまえるだけの魅力を持ったオンラインゲームを利用した経済発展の足がかりは、もはや切り離せるようなものではなくなった。

もはや世界の半数ものシェア率を有している中国がオンラインゲームそのものを規制しようものなら、おそらく世界的な経済システムへの影響力は甚大だ。それこそ経済制裁などと比較にならないほどのダメージを、日本を始めとした世界各地にオンラインゲームを運営している企業に深刻なダメージを蒙る。害悪をもたらしているものだが、国からすれば貴重な財源を生み出している、金の成る木としても見られているため、今後も中国はそうした相反する感情に苛まれることに成るだろう。

対処法として

では具体的にどの程度の対処が行われているのかというと、具体的にオンラインゲーム依存症に苛まれやすい人々に対しては、ゲームをプレイしている時間を減らすことを推奨している。その中でゲームをプレイする時間帯を3区分にすることで、わかりやすく目処を敷くことにした。具体的に、

  • ①3時間以内の遊戯:健康状態
  • ②3時間以上5時間以内の遊戯:疲労状態
  • ③5時間以上の遊戯:不健康状態

こうして線引きがされた。あくまで中国ならではの基準となっているため、必ずしもこれが正しい明確なラインとなっているわけでは無いので、その点は注意しよう。

かつて、そして現在でもそうだがゲームをする事は成績を下げるためにしてはいけないと考えている人は少なくないはず。だがその反面、経済という視点で見れば著しい成長が見られているだけあって、それまではゲームをすることそのものが禁止されていた社会が、いつの間にか寛容に受け入れるまでに変容した事はやはり目を見張るべきところ。ただその分依存症という問題をどう悪化させないようにするか、そういった点も考えながら中国のオンラインゲーム市場の動向を今後も見守っていくのも面白い。